祁答院森の工場

2002

平成9年から10年ころクレテックなど
木造接続金物工法に興味を持ち、い
ろいろ研究を始めたころ、(財)日本住
宅木材技術センターが木造住宅合理
化システム認定制度を設け、木造金
物工法を支援していることを知った。
認定を受けた工法を集めた本を取り
寄せ勉強を始めた時、ピーウッド工
法を知った。

12センチ角の木材に32ミリ程度の
穴をあけ、これに熱風を吹き込んで
強制乾燥させ含水率を10%以下ま
で落とす。木材は芯の部分が乾燥し
にくいので、この工法では効率よく
乾燥材が得られる。実験によると芯を穴繰りしても、圧縮強度に影響はないそうである。
むしろ乾燥が進むので高強度が得られるメリットがあるようだ。この加工材をパワーウッド、
略してピーウッドと称している。
さらにこの穴を利用して、柱材に鉄筋を通し横架材に緊結すると強固な軸組みが得られる。
これがピーウッド工法として認定を得ていたのであった。

この工法の特許を持つ日栄住宅に連絡を取った時からお付き合いが始まり、この工法を
使った鹿児島県産材の使用促進を図る林野庁の補助事業で、この工場が計画され、そ
の設計に携わることになった。
祁答院という鹿児島市から北に35キロほどに在る小さな町に建築された工場は、全国から
見学者が来ることが想定されるため、その見学通路として回廊を設け、これがこの工場を
特徴づけるデザインとなった。

この工場では、木材の穴繰り加工だけではなく、
パネル工法を見据えた総合化工場であり、将来
は建具の製作も視野に入れていた。
しかしその後の景気の変動で、思うように
売り上げが上がらず2007年ころついに事業
組合は解散となり、工場は閉鎖されたままに
なっている。

右下の透視図は、当初計画されていた全体
イメージである。右上がL型の加工場で中央
に事務所棟がある。左下側は、製材工場と
ストックヤード及び倉庫が計画されていた。
加工場の南には広場があって様々なイベン
トなども此処で催されるはずであった

右図は工場全景、中央の四角い
建物はトイレと作業員休憩室。左
と正面が加工工場で、回廊が取
り囲んでいる。右の三角屋根は
事務所棟。

2階の回廊から加工工場が見学できる。

階段ボックスとその向こうが1階トイレ、2階休憩
室の建物。

上と下の写真は回廊の詳細。ピーウッドを全面に使用

事務所棟。ガルバリウムの一文字葺き屋根。

上は加工工場と乾燥炉。下は工場内部の写真。

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回廊の左側が加工工場